2011年12月2日金曜日

第三次世界大戦は中東と極東から始まる: イランの核開発と「アラブの春」、そして北朝鮮

最近、イラン情勢が激動している。イランの核開発が一層進展していることを受けて先月(11月)21日、英国、米国、カナダがイランに対する金融制裁を発 動、これに対する報復としてイラン国会は英国との外交関係を弱める法案を同月27日に可決、同月29日には英国の金融制裁に抗議するイラン人のデモ隊が駐 イラン英国大使館に乱入する騒ぎとなり、ついに翌30日、英国は同大使館の閉鎖を決定した。さらに、フランス、ドイツ、オランダなど他の西欧諸国も駐イラン大使の一時召還を決定し、イランと西側諸国との関係が急激に悪化している。

そのような情勢の中、英タイムズ紙は30日、イラン第3の都市イスファハンで28日に核施設の爆発が起きたと報じた。イランでは、12日にもテヘラン郊外の武器庫で爆発が起きているという。

イランの核問題がここまで注目される理由の一つは、イランの大統領マフムード・アフマディネジャードは、「イスラエルを地図から抹消」することを 公言しているからである。一方、イスラエルは、自国の生存を守るためにはいかなる手段をも辞さないような国である。例を挙げれば、1981年のイラクの原 子炉爆撃、2007年のシリアの核施設爆撃など、枚挙に暇がない。そしてそのイスラエルは、公式には否定も肯定もしていないが、核兵器を既に保有してい る。

したがって、もしイランが核兵器を完成させるようなことになれば、イランはイスラエルをただちに核攻撃するかもしれない。そして、そのように自国 に対して核攻撃を仕掛けてくるかもしれない国に対するイスラエルの反応としては、次のような可能性も十分に考えられる。すなわち、核攻撃に対する報復、も しくは核攻撃を未然に叩き潰すために、イランに対して核を使用する。

もしもイスラエルがイランに対して核を行使するような事態になれば、周辺のアラブ諸国も黙っていられないだろう。たとえアラブ諸国の政治指導者が イスラエルの恐ろしさを十分承知してイスラエルとの対立を避けようとしても、それでは自国民からの突き上げを食うことは必至だ。既に今年初めから進行中の 「アラブの春」で、アラブの政治体制は、もはや自国民の不満をコントロールしきれなくなっていることは証明済みである。アラブの政治指導者は、いやでもイ スラエルに対して強硬な姿勢に出ざるを得なくなる。

そのような事態になると、全アラブを巻き込んでの対イスラエル戦争となる可能性も拭えない。かつてない規模の中東戦争となることは必至である。

西側諸国としては、このような展開になることは決して看過できない。したがって、西側諸国の間では、イランに核を持たせることは決してあってはならない、というのが共通認識になっている。

ここで問題になってくるのが、中東から遥か離れた極東の北朝鮮である。イランは、1980年代のイラン・イラク戦争時から北朝鮮と水面下でつなが り、様々な支援を受けてきた。ただしこのイランと北朝鮮とのつながりは、特に近年ではイデオロギー的なものというより、財政破綻に陥っている北朝鮮の外貨 獲得の一環という面が強い。北朝鮮は、2006年には核兵器開発を成功させているが、外貨獲得の一環として核技術やミサイル技術の提供をイランやシリアな どに対して行っている。

既に核兵器開発を成功させている北朝鮮が、今後もイランに対する技術支援を進めれば、イランが核開発を成功させる可能性はますます高くなる。した がって、アメリカは、北朝鮮から核技術が他国に流出することが決してないように北朝鮮と水面下で極めて微妙な交渉を行っていると思われる。アメリカが北朝 鮮に対して、強硬姿勢を取れなくなっている理由はこれだと考えられる。

だが逆に言えば、それでも北朝鮮がイランに対して核技術の移転を行うようであれば、そのときは北朝鮮に対する全面攻撃も辞さない、ということにな る。もし万が一そのような事態になれば、北朝鮮としてもただ黙ってやられるわけにはいかない。まだ実戦に使えるレベルにまで達していなかったとしても、そ のときは最期のあがきとして核を使ってくる可能性がある。そのときターゲットとなるのは、極東米軍の機能の大半が集まっている韓国か日本だ。

第三次世界大戦が始まるとすれば、それはイランか、北朝鮮を火種として始まることになる。