2008年6月26日木曜日

洞爺湖サミットへ向けて - 性急な対応は避けるべき

 第34回主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)の開催まで、あと2週間を切った。今回のサミットは「環境サミット」ともよばれており、環境問題、特に地球温暖化問題に焦点が当てられる見通しだ。議長国である日本の福田政権は、この問題に対して世界をリードして取り組むことを目指している。

 地球温暖化に関しては、二酸化炭素の排出量増大がその主要原因であるとする説が、すでに科学界のコンセンサスとなっているかのような報道がなされている。だが、そのようなコンセンサスが存在するというのは事実ではない。今年5月25日から同月30日にかけて千葉市で開催された日本地球惑星科学連合大会では、その6日間の日程のうち計3日間にわたって「地球温暖化の真相」というセッションが開かれた。筆者もこのセッションに参加したが、人為的地球温暖化説に異論を唱える研究発表が次々と行われていた。それとは別に「世界の気候変動と21世紀の国策」という特別シンポジウムも開かれた。このシンポジウムでは科学者だけではなく、政治家やジャーナリストも招かれたが、やはり巷でよくいわれるような人為的温暖化説一辺倒などではなかった。この大会には報道機関からの取材も来ていたが、このような二酸化炭素犯人説に異を唱える研究や研究者の存在は全く報道されていない。

 7月7日から同月9日にかけて行われる洞爺湖サミットに向けて、福田首相は6月9日、2050年までに温室効果ガス排出量を2050年までに60~80%削減するという「福田ビジョン」を発表した。だが、このような温室効果ガス削減、特にCO2削減に向けての取り組みが正当化されるには、「近年の温暖化傾向とCO2排出量との間の因果関係が明白である」こと、「温暖化に伴うリスクが温室効果ガス削減によるコストやリスクを上回る」という2つの条件がともに満たされなければならない。なぜなら、もし温室効果ガス削減に伴うリスクが大きかった場合、性急な対応をした後で「実は温暖化はCO2のせいではなかった」「実は温暖化はそれほど危険ではなかった」では取り返しがつかないからだ。後述するように、筆者は温室効果ガス削減に伴うリスクは非常に大きいと考えている。そのため、これら2つの条件についてはしっかり検証する必要があると考える。

 まず、第1の条件、「近年の温暖化傾向とCO2排出量との間に明白な因果関係があるかどうか」について検証してみよう。昨年2007年に、アル・ゴア元米国副大統領とともにノーベル平和賞受賞対象となった、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によれば、すでにこの問題には結論は出ている。近年の温暖化傾向はほぼ確実に人類の化石燃料の使用がその主因である、というのがIPCCの主張だ。だがこれに対しては異論も多い。

 CO2が温室効果を持つことは確実である。これはCO2分子が赤外線のエネルギーを吸収し、熱運動に変換するためだ。だがこのCO2による温室効果が現代の地球温暖化にどれほど影響を与えているかはわからない。IPCCの主張の根拠となっているのは、スーパーコンピュータを使った気候モデルの計算結果であるが、現段階ではモデルに組み込まれている数々のパラメータ(気候変動の要因)の値を動かして無理矢理過去の気温データに合わせている、というのが現状だ。

 CO2犯人説では過去の気温変動を全く説明できない。氷床コア、海底堆積物、年輪データなど様々な物理的証拠や世界史の記録には、人類が本格的にCO2を排出する19世紀以前から地球の気温は常に変化してきたことが記されている。特に、紀元前200年~紀元600年のローマ温暖期、900年~1300年の中世温暖期は現在よりも温暖であり、また1300年~1850年の小氷河期は非常に寒冷な時期であったことがわかっている。これらの結果は全て地球の全地域から得られた証拠に基づいているが、IPCCはこれらの気候変動は北半球のみの局所的な現象だったとしている。また、CO2犯人説では1940年代から1970年にかけての寒冷化現象も説明できない。もしCO2が温暖化の主要な原因であるならば、人類によるCO2排出が急激に増加したこの時期に急激な温暖化が起きていなければならないはずだ。特に、人為的なCO2排出量の8割は1950年代以降のものであるにも関わらず、19世紀後半から20世紀前半にかけて急激な温暖化が起きたことも説明できない。

 また、IPCCで用いられている現在の温暖化傾向は、過大に見積もられている可能性がある。1979年に人工衛星による気温観測が始まって以降のデータによると、1979年から2001年の間で、地表温度計による世界平均気温上昇は10年あたり0.15±0.05℃であるのに対し、人工衛星とラジオゾンデによる高さ8kmまでの対流圏の世界平均気温の上昇は、10年あたり0.05±0.10℃であった。この違いは、ヒートアイランドの効果によるものと思われる。ヒートアイランドとは人間活動による土地利用の変化により、地面が吸収する熱量が増えてしまい気温が上昇する現象である。地上温度計ではどうしても人が住んでいる地域での測定となってしまうため、この影響を受けざるを得ない。逆に、人工衛星による観測はほぼ全球を網羅している。つまり、大気気温の上昇傾向は3倍近く大きく見積もられているかもしれない。このヒートアイランドによる上昇分を補正すると、20世紀中の気温上昇はIPCCの主張するの0.6℃から0.2-0.4℃程度になる。この程度の温度上昇ならば、過去の気候変動と比べても全く自然な変動である。

 次に、CO2削減努力を正当化するための第2の条件、「温暖化に伴うリスクが温室効果ガス削減によるコストやリスクを上回るかどうか」について検証してみよう。まず、温暖化によるリスクがよくいわれているような破滅的なものかどうかについて検証する。

 IPCC第4次評価報告書によると、2100年までに地球の平均気温の温度上昇は最大で6.4℃にもなるという。だが、これはヒートアイランドの効果も含められた20世紀のデータに合うように組まれたコンピュータ・モデルによる結果だ。人工衛星による観測によれば、1979年以降、地上10km以下の対流圏における大気気温は強い温暖化傾向を示してはいない。また、実際に過去のデータを見る限り、一方的な温暖化傾向が100年も続くことはない。小氷期が終わり、現代温暖期が始まったのは1850年代のことだが、それから現在までの気温上昇は決して一様ではない。1860~1880年にかけて気温は上昇したが、それから1910年にかけて再び寒冷化した。そして1920~1940年にかけて急激に温暖化し、1940~1975年にかけては再び寒冷化、1979年から現在にかけて再び温暖化している。そしてエルニーニョ現象による異常気象が起きた1998年で一旦頂点に達して以降は、事実上温暖化はストップし、地球気温は寒冷化もしくは横ばいである。このように実際の温度変化は温暖化と寒冷化の繰り返しであるため、21世紀の終わりまでに一方的に気温が上昇し続けることは考えられない。したがって、今世紀終わりまでに6℃もの気温上昇が起こるということは、まず考えられない。

 温暖化によるリスクといえば、よく取り上げられるのがホッキョクグマやペンギンだ。彼らは温暖化によって絶滅に瀕するとされる生物種のシンボルとなっている。ところで、現在の生物種のほぼ全ては、少なくとも100万年前から生息している。つまり、現在の生物種はホッキョクグマやペンギンも含めて、100万年前から現在までに起こった気候変動を全て生き抜いていることになる。特に7000~5000年前の完新世気候最適期には、北極付近では現在よりも4℃ほど高かったといわれる。この温度変化は極地に行くほど大きかったため、低緯度地域では温度変化はあまりなかったが、世界平均でも現在より2℃ほど高かったようだ。確かに20世紀以降、絶滅に瀕する生物種は増えている。だがそれは人類による乱獲や、開発による生息地の現象によるものであり、温暖化によって絶滅したという生物種は報告されていない。

 温暖化により、異常気象が増えるという主張もある。だが、過去の歴史的文献によると、寒冷期にも温暖期にも干ばつや豪雨、熱波や寒波といった異常気象は同程度に起こるようだ。気温が上がれば、降水量の穏やかな上昇は考えられる。だが、豪雨や干ばつといった突発的な異常気象と温暖化については、何の因果関係も明らかにされていない。現に、1900年から2000年にかけて気温が上昇したにも関わらず、暴風雨活動の頻度に、長期的な増加傾向は認められない。近年の夏場の猛暑や暖冬は、ヒートアイランドによるものと考えられる。

 また、熱帯地域の温暖化がこれ以上に進むとも考えられない。それは、過去の温暖期においても、極地の温度は大きく上昇したものの、低緯度地域における温度変化は少なかったことからわかる。この原因は、最近の人工衛星を使った研究から明らかになった。熱帯太平洋では、海面温度が上がると湿度が上がり、雲の形成プロセスが促進され、結果として太陽光を宇宙空間に反射する低い雲が多くなり、逆に熱を大気中に閉じ込める高い雲が減る。つまり、熱帯太平洋上に巨大な放熱口が存在しているのだ。そのため、温暖化が起きてもその影響は赤道に近づくほど小さくなる。

 温暖化によるリスクについて最も大きく喧伝されているのは海面上昇だ。IPCCは、2007年の第4次評価報告書において2100年までの海面上昇は18~59cmになるだろうと予測している。実は、IPCCは1990年には30~100cm、2001年には9~88cmと予測していたため、報告を重ねるにつれて予測値がどんどん減少しているのだが、国際第四紀学連合(INQUA)海面変動沿岸変化委員会の専門家によると18~59cmでさえまだ過大に見積もりすぎで、実際には10cm±10cmだとしている。

 では、よくマスメディアで報道されるツバルやヴェネチアの水没の危機は何なのだろうか。実は、これらの原因は海面上昇ではない。もし仮に海面上昇が起きているのならば、その影響はあらゆる地域に及ぶはずであり、これらの地域だけが水没の危機にさらされるはずがない。まず、ツバルについて言えば、この島がサンゴ礁であるということに原因がある。サンゴ礁は石灰岩質であるため、そもそも水に溶けやすい。さらに、ツバル政府の環境大臣パアニ・ラウペパによれば、建築のために砂を採掘することが多くなり、そのため海水が水を通しやすいサンゴ礁の土壌を通って、一昔前には浸水しなかった地域にも浸入するようになったようである。さらに、ツバル政府環境担当のエリサラ・ピタは2001年11月24日のトロント・グローブ&メールのインタビューに対し、「ツバルは気候変動問題に利用されている。(中略) ツバルは沈んでいない」。ツバルが先進国による温暖化のせいで水没するという非科学的で煽動的な主張には、人為的温暖化論者も迷惑しているようである。

 また、ヴェネチアの水位上昇のうち、その半分近くは沿岸地域の柔らかな地盤に大量の建築物を建てたことによる地盤沈下によるものである。もちろん、海面は全く変動していないということはない。しかし、20世紀中の海面上昇はわずか17±5cmである。IPCCは、そのわずかな上昇率でも数世紀から数千年の間に4~6mの上昇をもたらすだろうと警告しているが、それだけの長い期間であれば十分に対応できるし、過去の気候変動パターンからするとその前に次の寒冷期が訪れる可能性すらある。

 では次に、温室効果ガス削減によるコストとリスクについて検証してみよう。これについては2006年にイギリスの経済学者ニコラス・スターンが結論を出し、温室効果ガス削減によるコストやリスクは温暖化によるリスクを大幅に下回るだろうと報告書を出した(スターン報告)。しかしこれは、性急な化石燃料の使用削減がもたらすリスクをあまりにも過小評価している。

 まず、現在の段階で化石燃料に匹敵する効率をもつエネルギー資源は、原子力エネルギー以外には存在しない。太陽光発電も風力発電も、とうてい現在のエネルギー需要を代替することはできない。もしこれらで現在のエネルギー需要を代替しようとすれば、あまりにも広大な土地が必要だ。恐らくこれによって、野生生物の生息地を奪ってしまうだろう。原子力エネルギーを積極的に利用するか、もしくはよほどのブレークスルーがない限り、エネルギー需要を化石燃料以外で満たすのは不可能だ。

 では、エネルギー需要そのものを削減したらどうなるか。エネルギー需要を削減するということは、経済活動全体の縮小を意味する。それによって起こる構造的な不況の影響は考慮されているだろうか。クリーン・エネルギー開発によって新たな産業が起こり、経済の発展につながるという意見もあるが、化石燃料と比較して経済的に全くペイしないような産業では帳尻が合わない。したがって政府の保護が必要となるが、そのような政府の保護によって確実に経済活動全体に負荷がかかるだろう。

 このように、温室効果ガス削減には多大なリスクが伴う。したがって、あまり性急な対応をすべきではない。温室効果ガス削減を正当化するためには、地球温暖化と温室効果ガスとの間の因果関係が明確であり、さらにその温暖化が破滅的な結果をもたらすことが示されなければならない。事を急いで温室効果ガス削減に踏み切った挙句、実は温暖化はCO2のせいではなかった、温暖化には何の危険もなかった、では済まないのである。

 現在、地球温暖化問題に関して最も影響力のある存在となっているのがIPCCであるが、その結論をそのまま受け入れることに対しては慎重にならざるを得ない。なぜなら、IPCCの1996年報告において決定的な密室での書き換えが判明したからだ。IPCC1996年報告は、1995年末に顧問科学者の査読を受け、承認された。だが、この報告書の第8章の主執筆者を務めたベン・サンターは、その顧問科学者による査読後に第8章の書き換えを行った。その内容は、「地球気候に対する人間の影響は明らかである」とする文章を付け加える一方で、「気候変動が人為的なものと断定する証拠は見つかっていない」とする記述を削除するものだった。ベン・サンターはアメリカのローレンス・リヴァモア国立研究所の科学者であるが、なぜこのような書き換えを行ったかはわからない。しかし、IPCC作業部会のジョン・ホートン議長は、1995年11月15日付けの手紙で、そのような改竄の要求を示唆する指示をアメリカ国務省から受け取っていた。この手紙の署名は、当時の国務次官補臨時代理デイ・オーリン・マウントだったが、当時の国際問題担当国務次官ティモシー・ワースは熱心な人為的温暖化説の支持者であり、アル・ゴアとも仲がよい。恐らくサンターによる報告書の書き換えは、ワースの指示によるものだったと考えられる。

 なぜこのようなことが起こるのだろうか。それには、地球温暖化問題が単なる科学的な論争を超えて、国際政治における駆け引きの道具として使われているということを理解する必要がある。冷戦終結によるイデオロギーを軸とした2極構造の崩壊によって、世界は再び各国がそれぞれの利益を追い求める時代に突入した。特に近年、資源獲得競争が激化していく中で、各国はいかに他国の資源消費を抑え、自国の取り分を確保するかに心血を注ぐようになった。そうなると、地球温暖化問題は他国に対して資源消費の抑制を要求する際の大義名分になるのである。

 実際に、各国はそれぞれ確固とした国家戦略を組んだ上で地球温暖化問題に取り組んでいる。京都議定書は、1990年を基準として各国が温室効果ガスの排出を何割削減すべきかを定めたものだが、ヨーロッパは、1990年を基準とすることで削減目標を比較的簡単に達成することができる。1990年といえば、イギリスは非効率的な石炭燃料から北海油田の石油燃料に転換する直前、ドイツでは非効率的な東側の工業を西側の水準に改良される前、といった具合だ。フランスも主要なエネルギー源が原子力であるため目標達成は難しくはない。こうしてヨーロッパは、他国に対してエネルギー消費削減を声高に要求することができる。

 アメリカは、クリントン政権時代には最も温暖化対策に熱心であったが、ブッシュ政権移行後にその態度を180度変えた。一時は大国の横暴とも言われた政策転換であったが、ブッシュの判断は全米科学アカデミーの提言を受けてのものだった。

 ロシアのプーチン大統領は、当初は京都議定書を批准しないと宣言していた。京都議定書の発効条件は、1990年時点の批准国の温室効果排出量合計が全体の55%に達することであった。そのためアメリカが批准しない以上はロシアが批准しなければ京都議定書は発効しない。そのため温暖化対策を積極的に訴えてきた諸国は色めき立った。ところが後に態度をひるがえし、2004年に批准に踏み切った。ロシアにとっても、旧ソ連時代の旧産業が一新される前の1990年が基準年というのは都合がよかった。プーチンが途中で態度をひるがえした背景には、1990年代の経済的混乱が収拾し経済成長への道筋がついたことのほかに、京都議定書の発効を可能にし、旧ソ連時代の旧産業を一新したことによって得られた排出権をヨーロッパに売ることによってヨーロッパに貸しをつくることができる、という事情がある。最終的なロシアの目標は、ヨーロッパに恩を売ることによって味方につけ、冷戦後のアメリカ一極集中への対抗軸をつくることだろう。

 オーストラリアも、2007年に左派のケビン・ラッドが政権を握るまでは京都議定書の批准を拒否していた。

 こうした中で、資源小国の日本は1973年の第一次オイルショックからすでに相当の省エネ化をすすめてきたにも関わらず、日本は6%という削減目標を何の計算もなしに受け入れてしまった。それどころか、実現が可能かどうかや経済に与える影響を綿密にシミュレーションもせずに、自らすすんで2050年までに温暖化ガス排出を60~80%削減するという宣言をしてしまった。そもそも日本が温暖化対策に力を入れている理由も、この分野においてリーダーシップをとり、国際社会における地位向上を目指すという極めて政治的なものだ。それも、実行可能かどうか綿密な戦略を立てていないという点で、実に幼稚な政策判断である。地球温暖化をめぐる科学は、政治的都合によってひどく歪められてしまっている。

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