2015年1月2日金曜日

勝手に選ぶ2014年の10大ニュース:世界編



第1位:クリミア危機・ウクライナ危機
2013年末から始まっていたウクライナの首都キエフにおける反政府運動は今年2月に頂点に達し、2月22日、親露派のヤヌコヴィッチ大統領の退陣に至った。この動きに対して、ロシア系住民の多いクリミア半島のクリミア自治共和国およびセヴァストポリ特別市、そして彼らの背後にいるロシアが反発、ロシアはロシア系住民の保護を名目に、クリミアを軍事侵攻して3月2日までにクリミア全土を制圧。3月11日にクリミア自治共和国およびセヴァストポリ特別市はウクライナからの独立を宣言した。その後、3月18日にウクライナからの独立を宣言した両者はロシアへの編入条約に調印、ロシアによるクリミア併合が実現した。さらにその後、ロシア系住民の多いウクライナ南部・東部地域では、親露派の武装民兵がウクライナからの分離を求めてウクライナ政府に対する武装闘争を開始、現在までウクライナ南部・東部地域は実質的な内戦状態にある。さらに、7月17日にはこの空域を飛行中のマレーシア航空機が親露派民兵によって誤って撃墜される事件が発生した。西側諸国は親露派武装民兵は実質的にロシアのコントロール下にあるとみなし、ウクライナに対する侵略行為としてロシアを非難、対露経済制裁を実施するなどしており、ウクライナをめぐって欧米vsロシアの対立が鮮明化、新冷戦状態へと突入しつつある。


第2位:イラク・シリアにおける「イスラム国」グループの勢力拡大
フセイン政権崩壊後のイラクにおける反米武装闘争や、シリア内戦における反政府武装闘争を行っていた武装民兵組織「イラクとシャームのイスラム国(ISIS)」は、今年に入り急速にその軍事力を増大させ、イラクの各都市に対する攻撃を開始した。1月から6月にかけてシリア領内からイラク領内に占領範囲を広げ、6月29日には組織名を「イスラム国(IS)」に変更し国家の樹立を宣言し、現在ではイラクとシリアにまたがる広大な地域を支配下に置くに至っている。ISは、中東に引かれた現在の国境を完全に否定しており、西アフリカ・中部アフリカからイベリア半島、バルカン半島、中央アジアに至る広大な地域を支配下に置くカリフ制のイスラム国家の樹立を目指している。さらに、とらえた敵兵の捕虜や人質などに対する処刑の様子を動画に収めオンライン公開するなどの残虐性をアピールしている。そのため、国際社会はISの活動を既存の主権国家体制に対する挑戦ととらえ、ISの殲滅に向けて一致して強い態度で臨もうとしている。


第3位:エボラ出血熱のアウトブレイク
2013年末にギニアでエボラ出血熱による死亡者が確認されて以来、ギニア、リベリア、シエラレオネを中心とする西アフリカ諸国で記録的なエボラ出血熱の流行が起こった。エボラ出血熱の流行はこれまでにも何度かあったが、今回はギニア、リベリア、シエラレオネの首都地域で流行するなど、都市域での流行が発生した点で従来の流行とは違うものがあった。さらに今回は、アメリカ、イギリス、スペインにおいても感染者や死亡者が確認され、欧米の先進諸国への蔓延の恐れもある初めての流行であった。WHOは今回のエボラ出血熱の流行が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」であると宣言、感染者数、死亡者数とも過去最多のアウトブレイクとなっている。


第4位:アフガニスタンにおける国際治安支援部隊の任務終了
2001年のタリバン政権崩壊以来、13年間に渡ってアフガニスタンに駐留し、タリバン勢力の掃討やアフガニスタン国軍・警察に対する訓練を行うなどしてアフガニスタンの治安維持活動に従事してきたNATOの国際治安支援部隊(ISIF)が、12月28日を持ってその任務を終了した。これにより、今後の国内の治安維持活動は、アフガニスタン当局が単独で担当することになる。しかしながら、近年はタリバンの勢力はむしろ攻勢を強めており、ISIFの任務終了・撤退に伴ってタリバンはいよいよ復権に向けてその勢力を一層拡大させるのではないかと懸念されている。


第5位:記録的な原油価格下落
今年のはじめに1バレル94ドル程度だったWTI原油価格は、6月末までに107ドル程度まで上昇したあと、一転して下落に転じ、10月までに90ドルにまで下落、その後さらに下落の勢いは増し、12月末には53ドル台と、リーマン・ショック後の不況時である2009年以来、5年半ぶりの安値となった。この記録的な原油価格の下落の背景には、北米で開発が進むシェール・オイルの増産と、その北米におけるシェール・オイル開発に対抗して行われたサウジアラビアによる原油増産がある。OPECの筆頭であるサウジアラビアが価格維持のための生産調整に動かなかったことによって、OPECの価格調整機能は実質的に失われたと考えられる。この記録的な原油安により、国家収入の多くを天然ガス輸出に依存しているロシアの財政が圧迫されており、ウクライナ危機をめぐる西側による経済制裁の効果を一層強化させている。この結果、ロシアの通貨であるルーブルの価値も大幅に下落しており、記録的なルーブル安となり、1998年のロシア通貨危機の再来になるのではないかと懸念されている。


第6位:イスラエルのガザ侵攻
6月12日に起こったイスラエル人入植者の少年の誘拐・殺人事件をきっかけとして、イスラエル側がガザに5年ぶりとなる本格的な軍事侵攻を開始。7月8日に空爆を開始、さらに7月17日には地上作戦を開始し、パレスチナ側の武装組織がテロ目的に作ったとされるイスラエルへの侵入用の地下トンネルの破壊を目的とした軍事侵攻を行った。戦闘は1ヶ月以上にもおよび、8月26日になりようやく双方が無期限停戦で合意した。


第7位:マレーシア航空370便失踪事件
3月8日、マレーシアのクアラルンプールから中国の北京に向かっていたマレーシア航空370便の航空機が、タイランド湾上空で消息を経った。当初は同機が行方不明となったタイランド湾や南シナ海を中心に捜索が行われていたが、その後、同機は途中で西に針路を変更していたことや、通信信号が途絶してからも飛行を続けていたこと、機内の何者かが意図的に通信装置をオフにした可能性などが明らかになり、捜索すべき範囲はインド洋の幅広い範囲へと切り替えられた。その後、衛星画像などにより、この機体と関連すると思われる漂流物が見つかったとのニュースが何度かあったが、結局いずれも実物の発見には至らず、同機につながる破片などの物証は一切見つからず、現在も完全に行方不明のままである。なお、7月17日にはマレーシア航空17便が、内戦中のウクライナのドネツィク州上空で親露派武装民兵に誤って撃墜される事件が、12月28日にはマレーシアを拠点とするエア・アジアのQZ8501便がインドネシアのスラバヤ沖で消息を経つ事件が起きている。


第8位:チュニジアで「アラブの春」以来初の議会選挙・大統領選挙
2011年の「アラブの春」の発端となったチュニジアにおいて、「アラブの春」以来初となる議会選挙が10月26日に行われ、世俗派の政党がイスラム主義政党を下して勝利、12月21日には大統領選挙の決選投票が行われ、やはり世俗派の候補が勝利した。「アラブの春」により政変が起こった国のうち、エジプトやリビアでは民主化は行き詰まっており、チュニジアは「アラブの春」以後に民主化が順調に進展している初めての国となりそうだ。


第9位:スコットランド独立騒動
9月8日、スコットランドのイギリスからの独立の是非を問う住民投票が実施された。事前の世論調査では独立賛成派が初めて反対派を上回るなど、賛成派と反対派が極めて拮抗した状態であったが、結果は僅差で独立は否決された。しかしながら、今後イギリスの連合王国政府はスコットランド自治政府に対する大幅な権限移譲が迫られるとみられているほか、スコットランド以外にもウェールズや北アイルランドへも同様の対応を迫れるとみられる。さらに、スペインのカタルーニャ州など、他の国の同様の地域の独立問題にも影響を与えた。


第10位:香港における反政府デモ
次回の香港行政長官選挙をめぐって中国の全国人民代表大会常務委員会が、行政長官候補には指名委員会の過半数の支持が必要であることを決定したことに対して、香港の学生団体は激しく反発。中央政府の意に沿わない人物を事実上排除するための方策であるとして、9月27日より行政長官選挙の完全な民主化を求める反政府デモを展開した。10月21日には香港政府当局者と学生代表との間での対話も行われたが、最終的には12月15日に警察当局によりデモ隊は強制的に排除され、デモは終結した。


その他、注目すべき2014年のニュース
・カナダの首都オタワにおける連邦議会議事堂襲撃テロ
・米・キューバの国交正常化交渉
・パキスタン・タリバーン運動による学校襲撃
・記録的なルーブル安
・イスラム過激派によるナイジェリアの女子生徒大量誘拐

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